輔仁薬局

健康処方箋 column

輔仁薬局健康処方せん薬剤耐性菌と薬

薬剤耐性菌と薬

author:みさと薬局太平町店 薬剤師 白坂 崇雄
published in:大分合同新聞令和3年4月掲載  No.146

 風邪の時に飲む薬は?と聞かれたら何を思い浮かべるでしょうか。一般的には総合感冒薬、解熱剤、咳止めなどを思い浮かべると思います。しかし薬局で働いていると患者さんから「風邪で受診したのに『抗生物質(抗菌剤)』は出てないの?」と言われることがあります。私自身も薬剤師になるまでは、風邪には抗生物質を使用するイメージがありました。しかし風邪の原因は、細菌感染よりもウイルス感染が多くを占めています。そして新型コロナウイルス感染の情報により多くの方が知ったと思うのですが、抗生物質は細菌感染に効果がある薬であり、ウイルス感染には効果がありません。このような抗生物質の不適切な使用は、効果がないだけではなく、薬剤耐性菌の出現や副作用の観点からも推奨されません。
 薬剤耐性菌とは、細菌が抗生物質に対して耐性を獲得して、抗生物質が効きにくくなる、又は効かない状態になる事を言います。薬剤耐性菌は通常は問題が無い場合も多いのですが、体力が落ちて免疫力の落ちた場合に重篤化して死に至る場合もあります。国立国際医療研究センターの研究では、薬剤耐性菌の中でも頻度が高いメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) とフルオロキノロン耐性大腸菌 (FQREC)の2つだけで日本国内でのそれらの菌血症による死亡者数は年間に約8000人との報告があります。世界でも薬剤耐性菌による死亡者数は年々増加しており、このまま対策を講じなければ2050年には全世界で年間1000万人の死亡者数に達すると予想されています。今はどうしても新型コロナウイルス感染を注目してしまいますが、この薬剤耐性菌にも注意しましょう。   
 そして薬剤耐性菌の出現と増殖を防ぐためには、抗生物質の適切な使用が重要です。
不要な場合に使用しないのはもちろんですが、抗生物質が必要な感染症の場合は自己判断で中止したり減らしたりはせずに、指示された用法用量をしっかりと守りましょう。 
 また一部の抗生物質は、薬や食物と飲み合わせの悪いものがあります。その他にも注意点があるので、何かご不明な点がございましたらお気軽にご相談して下さい。それではお大事に。
*抗生物質と抗菌剤は厳密には少し意味が違うのですが、今回は同様のものとして記載しています。

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