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健康処方箋 column

輔仁薬局健康処方せんピロリ菌と胃炎

ピロリ菌と胃炎

author:ほじん薬局片島店 薬剤師 松永 康臣
published in:大分合同新聞平成29年6月掲載  No.123

 新聞やテレビで度々注目されるピロリ菌。この菌は胃の粘膜に棲みついて悪さをする菌です。しかし、昔は胃の中は強い酸(胃酸)があるために、菌はいないと考えられていました。なぜなら胃酸は、金属でも溶かしてしまう強い酸であり通常の菌は生きられないからです。ピロリ菌も本来であれば胃の中では生きられません。それにもかかわらずピロリ菌が胃の中で生きていける秘密は、ピロリ菌が「ウレアーゼ」という酵素を出しているからです。この酵素は胃の中の尿素からアルカリ性のアンモニアを作り出してピロリ菌のまわりの胃酸を中和します。そのため、ピロリ菌は胃酸にやられることなく胃の中でも生息できるのです。

 では、ピロリ菌が胃の中に生息しているとどのような事が起こるのでしょうか?症状が出ない方もいますが、代表的なものに「慢性胃炎」があります。ピロリ菌がつくりだす酵素「ウレアーゼ」により生じたアンモニアによって、直接胃の粘膜が傷つけられて胃の粘膜に炎症が起きたり、ピロリ菌から胃を守ろうとする免疫反応によって胃の粘膜に炎症が起こったりします。一度ピロリ菌に感染すると、お薬で除菌しない限り、ほとんどの場合いなくなりません。そのため、ずっと胃にピロリ菌が生息した状態が続くことで炎症を繰り返す状態が続く「慢性胃炎」の状態になります。慢性胃炎を放置しておくと、「胃潰瘍」や「十二指腸潰瘍」、胃酸を分泌する胃腺が縮小し胃の粘膜が薄くなってしまう「萎縮性胃炎」に進行し、更に一部が胃がんに進行することもあります。

 このように放置しておくと怖いピロリ菌ですが、呼気検査などで比較的容易に検出する事ができます。また、感染が確認されれば除菌治療を受ける事ができます。日本で発見される胃がんの95%以上はピロリ菌感染が原因とされていますので、胃がんを予防する意味でも気になる方は検査を受けてピロリ菌感染を発見し、除菌する事が大切です。

それでは、お大事に。

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