「今日はお腹の調子が悪いから胃薬を飲もう。自宅にいつもの胃薬があったから、とりあえず総合胃腸薬と書いてあるこれを飲んでおけばいいか。」こんなことはないでしょうか。胃薬はどれも似たり寄ったりと考えている方は多く、常備薬を一つに決めてしまっている例が良く見られます。しかし、その“胃薬”は本当に症状に合ったものでしょうか。
「胃腸の調子が悪い」と表現される症状には、胃もたれ、胃痛・腹痛、食欲不振、吐き気、腹部膨満感、下痢など様々ですが、同じ症状でもその原因によって服用すべき薬は違い、適切に選択しないと逆効果となってしまう事があります。
胃痛・腹痛を例に挙げると、胃腸が過敏に動いて痙攣したような状態で起こる痛みでは胃腸の働きを抑制する薬、逆に胃腸の活動が低下し胃の内容物が停滞する為に起こる腹部膨満感や便秘を伴うような痛みでは胃腸の働きを促進するような薬や消化薬、下剤などの服用が必要となります。胃酸などの刺激で胃粘膜を傷つけて痛みが出てしまっているようなときには胃酸を抑える薬や胃の粘膜を保護する薬を選択することとなります。
このように同じ“痛み”ひとつとっても必要な薬が変わり、症状によっては作用が逆の薬が必要となってくるのです。また、下痢が起こっている際に通常は整腸剤や下痢止めなどが使用されますが、食中毒などの感染性の下痢を起こしている際に下痢止めを使用すると、細菌やその毒素が体の中に溜まってしまい、かえって悪化してしまうこともあります。
「常備薬としての胃薬はこれ」と決めて使用するのではなく、その時々の症状に応じて適切に選んで服薬をするようにして下さい。また、漫然と市販薬のみで症状を抑えていると、潰瘍や胃がんなど重大な疾患の症状が隠れてしまうことがあるので、症状がなかなか改善しないときにはきちんと受診をするようにして下さい。
それではお大事に。