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健康処方箋 column

輔仁薬局健康処方せん良薬口にうまし?

良薬口にうまし?

author:こがづる調剤薬局 薬剤師 堤 喜代明
published in:大分合同新聞平成22年3月掲載  No.77

「良薬口に苦し」と言いますが、特に漢方薬というと苦くて飲みにくく、鼻をつまんで飲むくらいだというイメージはありませんか。ところが、実際には「良薬口にうまし」となることも多いようです。

漢方医学では、その人の体質や病気がどんなふうに表れているかなどを独特の診察方法により総合的に判断した「証(しょう)」という見立てを行い、薬を処方します。この証に合った漢方薬を飲むと、非常に苦いと言われている薬でもおいしく感じることがあります。これは、漢方薬の味と効果が関連していて、病状によって、苦味のあるものが必要であったり、甘味のあるものが必要であったりとその時々で違うので、それを体が必要としている場合には、その味に抵抗なく飲むことができるからという理由のようです。

しかし、苦味などを強く感じるからといっても必ずしも自分に合わない薬ということではありません。味や香りが刺激となって、胃酸の分泌を促したり、胃腸の動きを良くするなど、それ自体が薬効になることもありますので、味や香りを感じながら服用することも大切です。ただし、吐き気がある時には、独特のにおいなどで吐き気が増すことがありますので、お湯に溶かしたものを冷やしてから飲むと良いでしょう。

本来、漢方薬は、生薬(しょうやく)類を各家庭で煎じて作るものでしたが、現在では、製薬メーカーが煎じ液を乾燥させて顆粒や錠剤としたエキス剤が一般的になっています。これだと、煎じる手間がいらず、大変便利になりました。エキス剤は、煎じ薬より味や香りがマイルドなので、お湯に溶かすことで煎じ薬に近い味や香りにして、漢方薬特有の味や香りをしっかりと味わいながら服用するとよりその効果を得られやすくなります。漢方薬の苦い味にも意味がある。それを知ると、これまで飲みにくいと敬遠していた漢方薬もちょっとだけ身近になったような気がしませんか。

それではお大事に。

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