鎮痛薬を使っているのに、毎日のように頭痛があり、以前より悪化しているような場合は、「薬物乱用頭痛」かもしれません。日本では、成人の3人に1人が慢性的な頭痛に悩まされているといわれています。「薬物乱用頭痛」は、慢性的な頭痛の一つで、いわゆる“頭痛もち”の人が、鎮痛薬を過剰に使い続けることで起こります。薬物乱用頭痛であることに気づかないまま、鎮痛薬を使い続けている人も多いとみられています。
片頭痛の人が、自己判断で手軽に入手できる市販の鎮痛薬を飲みすぎることによって引き起こされるケースが非常に多いといわれています。毎日のように鎮痛薬を飲んでいると、脳が痛みを感じやすくなり、かえって頭痛がひどくなってしまいます。
筋緊張型頭痛の人が、筋肉のこりの痛みを和らげるために、鎮痛薬の服用を習慣化した場合にも起こります。しかし、腰痛の人が毎日飲んでも薬物乱用頭痛にならないことから、頭痛もちの人が鎮痛薬を飲みすぎた場合に限って、脳の痛みをつかさどるメカニズムを狂わせるのではないかと考えられています。
原因となる主な鎮痛薬は市販の薬だけではありません。医療機関で処方される鎮痛薬、片頭痛の治療薬として使われる「トリプタン製剤」「エルゴタミン製剤」も、医師の指示を守らずに使いすぎると、やはり薬物乱用頭痛を引き起こします。
薬物乱用頭痛は、「月に15日以上頭痛があり、月に10日以上鎮痛薬を使い、その状態が3カ月以上続いている」とされています。自己判断で鎮痛薬を使っていて、何か思い当たることがあれば注意が必要です。
治療の基本は、原因となった鎮痛薬の使用を中止すること(断薬)です。使用を中止すると、一時的に頭痛が強くなり、不安を感じることもあります。つらい場合は、抗うつ薬、抗不安薬などを使って断薬を継続します。自分自身の努力で断薬に成功する人もいますが、多くの場合医師の助けが必要になります。
一年中、鎮痛薬を手放せなくなっているという状態は、薬物乱用頭痛の可能性が大きいです。できるだけ早く頭痛専門医、脳神経外科や神経内科などを受診することが勧められます。また、医師から処方された薬を指示通り使っても効かない場合は、自己判断で量や回数を増やすのではなく、医師によく相談するようにしましょう。本人からの正しい情報があってこそ、医師はその人に合った治療法を考えていくことができます。
それでは、お大事に。