輔仁薬局

健康処方箋 column

ピロリ菌

author:輔仁薬局日赤前店 薬剤師 後藤順子
published in:大分合同新聞平成26年4月掲載  No.104

日本人に多いとされる胃ガン。その胃ガンの最も大きな原因に、ピロリ菌が深く関連していることがわかってきました。

ピロリ菌は、正式名をヘリコバクター・ピロリといい、胃の粘膜に住みついています。胃の中は強い酸性のため通常の細菌は生きていけませんが、ピロリ菌はウレアーゼという酵素を使って自分の周りの胃酸を中和させるため、生きていられるのです。ピロリ菌に感染したからと言って、必ず潰瘍や胃ガンになるわけではありませんし、ピロリ菌以外にも要因はあります。しかし、感染したほとんどの人は慢性胃炎になり、除菌をしなければピロリ菌は胃の中に住み続けて、慢性胃炎から胃潰瘍や十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎、胃ガンなどを引き起こす可能性があることが明らかになってきました。

ピロリ菌は飲料水や食べものの口移しで、子どもの頃に感染すると考えられています。そのため、上下水道の普及率が低い、衛生状態が悪い国や地域では感染率が高くなります。先進国の中では日本の感染率は高く、50歳以上の日本人の7~8割以上が感染していると言われています。しかし、衛生状態が整ってきた今日では感染者の割合は減少しており、若い世代での感染率は低くなってきています。

ピロリ菌が見つかったら、2種類の抗生物質と、胃酸をおさえる薬を1日2回1週間服用します。これで約70~80%は除菌することができます。1回目の除菌治療で効果がなかった場合は、薬を変えて2次除菌をおこないます。2回目の除菌治療でほとんどの除菌ができます。軽度ですが、下痢や軟便、味覚異常や口内炎などの副作用が一時的に起こることがあります。

これまではピロリ菌の検査や治療の保険適応は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの患者さんに限られていました。しかし、昨年2月から胃炎の患者さんにも保険で治療ができるようになりました。これにより、日本人の胃ガンの発生リスクを減らすことがおおいに期待されます。潰瘍になったことがある方、いつも胃の調子の悪い方は、将来の胃ガン発生の予防の意味でも検査を受けられることをおすすめします。

それでは、お大事に。

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